最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
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そろそろ梅雨入りしそうな六月の初旬、俺は珍しくキッチンに立っている。まだつわりが治まっていない妻のために、なにか作ってやろうと目論んで。

つわりが始まってから、一絵を心配したお義母さんがたびたび手料理を届けてくれて、とても助かっている。それに頼れないときは、いつかの一絵のように俺が惣菜を買ってきたり、デリバリーを頼んだりしている。

彼女は多少無理をしても自分でなんとかしようとする部分があるから、少しでも休ませたい。そう思うのは、俺もお義母さんも同じなのだ。

ただ、俺は料理が苦手な人間で、手作りのものを食べさせてやることがなかなかできずにいた。

しかし今日は休みで時間があるので、せっかくだから挑戦してみようと思い立ったのである。

とりあえずいろいろな食材を買い込み、レシピを頼りにひと通り調理してみた。そうしてできあがった品々を腕組みして眺めていると、寝室のほうから一絵がやってくる。

大きめのTシャツにロングスカートの、ラフな姿だ。妊娠四カ月に入ったばかりで、まだまだ見た目にはわからないが、彼女の中では順調に命が育っている。
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