最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
食欲も失せてしまいそうな惨状でとても気まずくなるも、開き直って白状する。


「いろいろと挑戦した結果、うどんが一番失敗が少ないってことがわかった」


消化がよくて難易度の高くないものを選んだはずが、どれも失敗。ただ、うどんは茹でるだけだし、つゆも割るだけなので、俺にもできると判明したのだ。

それにしても、料理にもある程度のセンスが必要らしい。〝塩少々〟とか〝火が通るまで〟とか、そのあたりは作る人の感覚による部分も大きいのだろうから。

こんなに大変な作業を毎日してくれている人がいることを、本当にありがたく思う。


「おかゆって焦げることがあるんだな……ポトフもじゃがいもが粉々になるし……」


顎に手を当ててぶつぶつ呟いていると、一絵はぷっと噴き出し、「あっははは!」と大笑いした。

キッチンをすごい有り様にして、てっきり機嫌を悪くさせるかと思ったが、彼女は無邪気に笑うので呆気に取られる。


「いつも完璧な慧さんが失敗する姿を見られるなんて」
「俺はかなり複雑なんだが」


なぜか喜んでいる一絵は、口元を歪ませる俺に温かな声をかける。
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