最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「パパに〝はーい〟って返事したのかな」
「もしかしたら嫌がってるのかもしれない」


ネガティブ発言がおかしくて笑っていると、お腹から離された手が私の肩に移動し、優しく抱き寄せられる。

甘く爽やかな香りと逞しい腕に包まれて、トクトクと心臓が鳴るのを感じながら瞼を伏せる。


「……幸せすぎる」
「うん」


私の髪に顔を埋める彼が呟き、同じ気持ちで頷いた。私たちは少しずつ、ちゃんと〝夫婦〟になってきていると、今は自信を持って言える。

幸福に浸ってしばし抱きしめ合っていると、ふいに身体を離される。


「そうだ一絵、大事なことを忘れていた」


慧さんはそう言って腰を上げ、チェストの中からなにかを取り出して戻ってきた。キョトンとする私の前で、一枚の紙が広げられる。


「これなんだが……」


目に飛び込んできた〝離婚届〟の文字に、ギョッとして身体を引く。


「離婚!?」
「するわけないだろ。しかもこのタイミングで」


呆れ顔で即ツッコむ旦那様。一瞬デジャヴュかと……いや、立場が真逆になったかと思って叫んでしまった。

ざわめいた胸を撫で下ろす私に、慧さんはほんの少しバツが悪そうな笑みを漏らす。
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