最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
私の手は彼に取られて背中と共に壁に押さえられ、彼のもう片方の手は私を囲うようにして壁についている。目の前には、涼しげないつもとは違い、苦しそうに歪む顔。

え……えぇ? なんで私、高海に捕らえられて……!?

目を白黒させる私の肩に、彼は額をくっつけるようにしてうなだれる。


「一絵が好きだ」


──静かな密室に熱を持った声が響き、一瞬息が止まる。


「一緒にいると楽しくて、悔しいけど可愛くて。自分を飾らない一絵が、ずっと好きだったんだよ。いい加減に気づけ」


ぶっきらぼうにもう一度告げられ、心臓の鼓動が激しく乱れ始めた。頭の中も混乱しまくっている。

高海が、私を好き? 嘘だ、そんなのありえない。だって私、人妻どころか妊婦なのに……!


「なっ、なに言って……本気? 私は結婚してて、もうすぐ子供も生まれるんだよ?」
「だから我慢してたんじゃねーか」


彼はうなだれたまま、私を押さえる手に力を込めた。その手や声からは、憤りをなんとか堪えているのがわかる。


「結婚が決まったときも、妊娠報告をされたときも、地に落とされた気分だったよ。今だって、大きくなっていく腹を見るだけで気が狂いそうになる」
「高海……」
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