最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
たぶん、少なからず高海とのことが影響しているのだろう。あんなふうに誰かから熱く告白されたのが初めてだからとはいえ、ここまで顕著に表れるとは。

しかし、ミスについてはそんなこと関係ない。集中していなかった自分が悪いのだ。


「単純に私の確認不足です。二度とないように気をつけます」


背筋を伸ばし、自分を叱咤してそう返した。産休まであと約二カ月、気を引きしめて取り組まないと。

すると、慧さんがそばにやってきて、突然私の手を取る。首元のボタンを外して鎖骨が覗くセクシーな彼は、そのまま手を引いて私を抱き寄せた。


「わっ! け、慧さん?」
「会社では君と一線を引いておくよう心がけているが、今日はこうやって捕まえておきたくなった」
「……へっ!?」


『捕まえておきたくなった』って、一体どうして? すごく不機嫌そうだったから、ミスした私に怒っていると思ったのに!

ドキドキと困惑で目を泳がせていると、慧さんは大切そうに抱きしめる腕とは裏腹に、いら立ちを滲ませた声を放つ。
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