最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
数日後、ようやく残暑が和らいできてうろこ雲が広がる九月の空の下、毎月恒例の妊婦検診に向かう。
先日、妊婦体験や産後の赤ちゃんのお世話について学ぶ両親学級が行われ、慧さんも仕事の合間に一緒に参加してくれた。
年上らしき男性が多い中、慧さんはそのルックスもあって目立っていたのだが、オムツ替えや沐浴を熱心に練習している様子を見るだけで心がほっこりした。
ただ、スーツに妊婦ジャケットを着けた彼の姿はミスマッチすぎて、ひとり笑いを堪えていたのは内緒だ。
今から育児に積極的に関わろうとしていることを嬉しく思うし、そんな彼がますます好きになっている。
今日の検診も問題なく終わることを願って産婦人科のロビーに入り、受付を済ませた直後のこと。
採尿をするためお手洗いに向かおうとしたとき、前方から見覚えのある綺麗な女性が歩いてくる。お互い目を合わせた瞬間、ぱかっと口を開いた。
「あっ」
「この間の……!」
同時に声を上げ、顔をほころばせた。
彼女は先月、私が落とした母子手帳を拾ってくれた女性だ。また会えるとは。