最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
ぽん、と頭に温かい手が乗せられ、胸がぎゅっと苦しくなった。事実ではなくても、不倫だなんて言葉を突きつけてしまった罪悪感が込み上げてくる。


「慧さん……嫌な気持ちにさせて、本当にごめんなさい」
「一絵が悪いわけじゃないだろ。街で知り合いに会うことはいくらでもあるんだし、謝らなくていい」


俯く私は、落ち着きのある声をかけられてさらに苦しさを感じた。

不貞はまったくないと断言できるのに、どこか後ろめたさがあるのは、きっと高海から好意を向けられているからだ。

今回の件があった以上、隠しているのはよくない気がして、私は思い切って口を開く。


「……少し前、高海に告白されたんです」


慧さんがピクリと反応するのがわかり、私たちを取り巻く空気がピリッとしたものに変わった気がした。


「もちろん断ったし、高海に対して同期以上の感情はありません。ただ……友達としての関係を壊したくもなくて、これまでと同じ距離感で接していたんです。写真を撮られたときもそうでした。でも、それは彼も十分わかっていますから」
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