最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
太ももの上に置いた手を握り、正直な気持ちを打ち明ける。私はあなたを裏切ったりなどしないから、どうか信じていてほしいと願って。

……しかし、おもむろにソファに背を預けた慧さんの瞳からは、これまでの穏やかさが消えている。


「へえ……あいつ、やっぱり気があったのか。人の妻を口説くなんて、度胸があるな」


打って変わって冷淡な声で呟かれ、思わずゾクリとした。

慧さん、明らかに怒っている。どうしよう、なんとか宥めたいけど……。


「あの、高海もたくさん悩んだ上でしたことだと思うので……」
「そんなことはどうでもいい。君に色目を使っている男がいたってだけで気に食わないんだ」


ぴしゃりと返され、私は口をつぐんだ。

ため息を吐き出して額に手を当てる彼の表情は、どんどん苦々しいものに変わっていく。


「前から、一絵と高海が笑い合っているのを見るたび、無性にイラついていた。不倫なんか疑っちゃいないが、写真で見せつけられるのは余計にショックだったよ。昼間も今も、体のいいことを言ったが、余裕ぶっていただけだ」

「慧さん……」

「本当は君を束縛したいくらいだが、そんな大人げないことはしないから……せめて、あいつにもう隙を見せないでくれ。間違いがあってからじゃ遅いんだ」
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