最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
すべてを悟った九カ月

朝晩の気温がぐっと低くなった十一月の初旬、ようやく出産予定日の六週間前になった私は、明日から産休に入る。

仕事納めとなった今日は、定時を迎えると社員の皆が集まってきてくれた。彼らを代表して増田部長が私に大きな包みを差し出す。


「松岡さん、ひとまずお疲れ様。元気な赤ちゃんを生んで、落ち着いたらまた一緒に仕事しましょう」
「ありがとうございます! これ、なんですか?」


大きさのわりに軽いそれを受け取ると、先輩の女性社員が「抱き枕だよ。妊娠中、私も愛用してたの」とにこやかに答えた。

確かに、お腹が大きくなってきた最近は特に寝苦しいから助かる! 贈り物のセンスもさすがだ。

私は喜びながら皆に向かってペコペコと頭を下げた。

二週間ほど前に私と高海の不倫疑惑で騒然としたものの、日が経つにつれあっさり治まり、皆普通に接してくれている。制作部は基本いい人ばかりなので、本当に救われる。

結局、誰が投稿したのかはわからずじまいだ。菫さんとはあれから連絡がつかないので、逆に心配になっているのだが。

今のところ、他の嫌がらせは起こっていないのでひとまず安堵している。
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