最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
まだ少し尻込みしていると、それを察したのかどうかは定かではないが、彼はやや言いにくそうに口を動かす。


「畔上くんに協力すると約束した上で、私の望みもひとつ聞いてくれないか?」


俺にもなにか役立てることがあるのかもしれないと思い、背筋を伸ばして耳を傾ける。


「なんでしょう?」
「うちの一絵のことだ。まだ二十四歳だし焦らなくてもいいとは思うんだが、まったく浮いた話がないもんだから、このままじゃ孫の顔も見られないんじゃないかと心配でね……」


腕を組み、困った表情を浮かべる彼の口から語られたのは、意外な悩み事。

松岡社長のひとり娘は、今一緒に働いている子なので知っている。真面目ながんばり屋で、社長令嬢といえども地に足がついているしっかりした子だ。

瞳が大きく愛らしい顔立ちで、男女どちらからも好かれている印象だし、彼氏もすぐにできそうだが。


「一絵さん、デザインの才能がありますよね。仕事熱心で、気取らない性格も好感が持てますし、初めて会ったときのこともよく覚えています」
「おお~、そうか。畔上くんに気に入られていたとは、一絵も隅に置けないなぁ」
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