最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

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一絵を愛し、父親になろうとしている今、お互いに結婚することを選んだのは幸せな運命だったと思う。

あのときは、こんなに穏やかで、心の芯から温まる毎日を送るようになるとは想像もできなかった。

今日のように、妊婦検診を行う妻に付き添って産婦人科に来ている自分も。

八ヵ月に入ったわが子の姿を初めてエコーで見るために、なんとかリスケしてやってきたのだ。先月は両親学級に参加したが、母性に満ちた院内の雰囲気はまだ慣れないし、助産師のスタッフに〝パパ〟と呼ばれるとなんともむず痒い。

しかし、経産婦らしき女性が連れてきている小さな子を見るのは、とても癒される。

待合室で順番が呼ばれるのを待ちながら、その一角にあるキッズスペースで遊ぶ無邪気な子供たちを眺めていた。


「可愛いなぁ。ママは大変そうだけど」


隣にゆったりと座る一絵が、微笑ましげに表情を緩める。もうすぐ俺たちもああなるのだと感慨深く思いつつ、「そうだな」と笑みを返した。

すると、三歳くらいの男の子が遊んでいたボールが、キッズスペースを飛び出してコロコロと転がってきた。一絵の足元で止まったそれを俺が拾い上げ、男の子に渡しに行く。
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