最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
学校で色覚検査をしたほうがいいか否か、という問題については、いまだに賛否両論ある。どちらにもメリットとデメリットがあるからだ。

記事を書いた彼は反対派で、日常生活に支障はないし、差別や偏見に遭うくらいなら知らないほうがいい、という意見だった。

一絵になら打ち明けられると、自信がついた矢先にこの記事を見た俺は、相手の気持ちを考えると、本当に教えたほうがいいのかと迷い始めた。

俺はずっと、自分のハンデを理解してほしいと思っていたが、彼女にとってはどうだろう。

旦那が色弱者だと知るのは、ただ精神的な負担になるだけじゃないのか。だったら、特に助けが必要なほどではないのだから知らせなくてもいいのでは……と。

打ち明けるにしても、妊娠中の今は避けたほうがいい気がする。ただでさえデリケートな身体に、ストレスをかけてはいけない。

いつか話そうと思う日が来たら、そのタイミングでいいんじゃないか。それくらいの、いい意味で軽い気持ちでいようと決め、今に至る。

一絵と〝夫婦〟と言える関係になってから、ずいぶん気楽になれてきた。これはとてもいい変化だと思う。彼女を好きになったおかげだな。
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