最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
確かにそうなんですけど。初めてはきっと痛いし、絶頂するだとかいう感覚なんてわかりっこないと思っていたのに、ものすごく気持ちよくなってしまったんですけど。

私って実は淫乱体質なんだろうか。それとも、慧さんとの相性がよかったから?

いたって真剣に悶々と考えていたとき、大きな手が伸びてきて私の髪をさらりと撫でた。両手を少しずらすと、筋肉質な上体を露わにした彼が、熱を帯びた瞳で見下ろしている。


『どうして今まで抱かずにいられたのか不思議だ。……ほら、もう君を求めている』


その言葉と共に、私の下半身に熱く固いものが当たるのを感じ、ドキン!と心臓が大きく波打った。

嘘……慧さんが私に対してそこまで欲情しているなんて。

驚いているうちに唇が近づいてきて、舌や指で素肌をなぞられ、私の身体も再び熱がぶり返す。求められるのは素直に嬉しくて、私も応えたかった。


そうして、私たちは気絶するように眠りに落ちるまで、快楽に溺れた。そこに愛がないことに違和感を覚えるくらい、お互いを思いやって甘く溶け合った。

悲劇のヒロインよろしく、こんな行為は一度きりだと思って切なさで押し潰されそうだったのに、なんだかおかしなことに……。

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