最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「セフレだねぇ、それ」
月曜日の午後十二時半、賑わっている社員食堂のボックス席で、おっとりとした口調には不釣り合いな発言が飛び出した。
入社三年目の同期であり親友の及川 麻那が、私と慧さんの一部始終を聞いてそう返したのだ。
私としては衝撃的な事実を告白したつもりなのだが、のんびりした性格の麻那はあまり動じていない。それどころか、心外なことをあっけらかんと言う始末だ。
野菜ジュースをストローでチューっと吸い上げている彼女に、私はムッと顔をしかめて反論する。
「なんでよ。一応夫婦なんだから、関係を持ったって別におかしくないでしょ」
「だって、愛はないのに身体の相性がいいから抱き合ってるって……セフレじゃない?」
「違ーう!」
のほほんとした調子で小首を傾げるので、私は険しい形相でつい前のめりになった。
大学時代からずっと一緒の麻那は、私と同じWebデザイナーで、私が社長令嬢である事実も、慧さんと上辺だけの結婚生活を送っていることも知っている。もちろん、私が片想いしていることも。
それなのにセフレってひどいなと、パスタをくるくる巻きながら不満げに口を尖らせる私に、麻那は軽く手を合わせて謝る。