最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
役員会を終え、瀬在に頼んでリスケしてもらった俺は、慌ただしくオフィスをあとにした。
一絵から電話をもらってから三時間は経っているが、早くても夜になるとの言葉を信じれば、まだ余裕はあるはず。
そう踏んでいた俺は、産婦人科に着いて早々、考えが甘かったことを思い知る。
「奥様、予想以上に陣痛の進みが早くて。今、分娩室に移ってもらおうとしているところです」
スタッフの女性から聞かされて、一気に緊張が走る。案内された陣痛室という名の個室には、ベッドから立ち上がろうとしている一絵がいた。
俺に気づいて「けぇさん……!」と泣きそうな顔で呼ぶ彼女に、急いで駆け寄る。
「一絵、大丈夫か」
「なんか、あっという間に余裕なくなっちゃったんだけど、間に合ってよかっ……いったぁぁ……!」
陣痛には波があると聞いていたが、痛いときがやってきたらしく、俺の腕にしがみついて堪えている。
俺は腰をさすり、「がんばれ、一絵」と声をかけるしかない。痛みが引いたタイミングでなんとか分娩室に移動し、分娩台に上がることができた。