最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
まだか? あと少し。もう少し、がんばれ──。

必死に祈っていたとき、一絵の手からふっと力が抜けた。それとほぼ同時に、励まし続けていた助産師たちの声色が変わる。


「おめでとうございます~!」


小さな身体を取り上げるのが見え、祝福の声と愛らしい泣き声が響き渡った。

言葉にならない初めての感動で、胸がはち切れそうなほど一杯になる。

……生まれてきてくれたんだ、俺たちの子が。奇跡を目にしたこの瞬間は、きっと一生忘れない。

赤ちゃんの身体を拭き、計測をする助産師から、「元気な女の子ですよ」と笑顔で伝えられた。俺は心底安堵して、脱力している妻を労う。


「一絵……! よくがんばったな」
「よかった……痛かったぁ~」


涙を滲ませて正直な声を上げる彼女がいじらしい。手を握ったまま、乱れた髪を撫で、疲れ果てていても綺麗な彼女に笑みを向ける。


「ありがとう、本当に」
「慧さんも……ありがと」


瞳を潤ませて微笑む彼女がますます愛しく感じ、わが子共々早く抱きしめたくなる。
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