最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「……え……一絵!」
頭に響く声が徐々に大きくなってきて、重い瞼をうっすら開く。柔らかな明かりと共に人影が入り込んできた。
視界がクリアになってくると、愛しい人がとても心配そうな顔をして覗き込んでいるのがわかる。
「……慧、さん……」
「一絵……。ああ、よかった……本当に」
心底安堵した様子でため息を吐き出す彼は、瞳が潤んでいるように見える。慧さんが涙目になるなんて、何事……?
ぼんやり考える私の耳に、「妻が目を覚ましました」と言う声が入ってきて、はっとした。
そうだ。私、出産してすぐに気を失ったんだ。赤ちゃんはどうなったの?
身体に力が入らなくて動かせないし、下半身が痛いと実感し始めつつ、慧さんに真っ先に問いかける。
「赤ちゃんは?」
「保育器に入ってる。体重は少なめだけど、問題なく元気だって」
微笑みかける彼の答えに心からほっとして、「よかったぁ……」と私も笑みをこぼした。
「慧さんは抱っこできたの?」
「いや、まだだ。でもすごく可愛いよ」
「いいなー、どうして生んだ本人が見られないんだろう……ズルい」
「ごめん」
うらやましげな視線を送って唇を尖らせてみたものの、バツが悪そうにする慧さんが可愛くてすぐに笑った。