最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「でも、俺にも見つけられたんだ、その世界を。一絵を愛したから」


──彼の口から初めて紡がれたひとことに、私は目を見開いた。


「水族館の魚も、俺にとっては似たような色だったけど、一絵と一緒にいると綺麗だと思った。バラの花も、君の顔を思い浮かべれば一段と美しくて。なんてことない日常も、うまくいかなくて闇の中に落ちても、どんなときも君がいるだけで俺の世界は鮮やかになる」


一気に涙が込み上げ、ひと粒、またひと粒と目尻を伝う。

慧さんにとって、自分がそんなに大きな存在になっていたなんて。


「俺に希望を与えてくれてありがとう。君を愛せて本当に幸せだ」


愛おしすぎる彼の微笑みが、どんどん溢れる涙で見えなくなってしまった。

彼の気持ちを一瞬でも疑ったことを後悔する。それくらい、欲しかった言葉以上のものをもらえた。

なのに、もっと声を聞いていたいし、笑顔を見ていたい。触れていたい。愛というのはどうしてこんなに貪欲なのだろう。

慧さんの指が私の涙を拭い、頬を包み込む。鼻先が近づいて、優しい口づけを交わした。
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