最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
久しぶりの甘いキスに満たされる私に、彼は少しだけ唇を離して呟く。


「三十年以上生きてきて、初めて告白した。心の中では毎日言っていたのに」


初めて知った事実にキュンとしつつ、私たちはどこか似ているのかなと思う。私もずっと想い続けていたのに、それを伝えそびれていたから。

ちょっぴり間抜けな自分たちに笑ってしまうけど、慧さんからの愛情を感じていたのは確かだ。


「ちゃんと伝わってましたよ、慧さんの愛。でも……言葉にしてもらうと、こんなに嬉しいものなんですね」


瞳を潤ませたまま幸せ一杯の笑みを浮かべると、彼は情熱と憂いを入り交じらせて唇を弓なりにする。


「もう後悔したくないから、嫌ってほど言うよ。これからも毎日、死ぬまでずっと、ずっと愛してる」
「私も……一生愛してます」


ありきたりな常套句も私たちにとっては新鮮で、何度も囁き合う。

さらにたくさんキスをして、ケンカしてから空いたままだった隙間はみるみる埋まっていった。

ほつれそうになった糸はまた結び直す。それを繰り返しながら、絆を強くしていくのが夫婦なのだろう。
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