最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
キスが止み、甘い吐息を漏らした私は、彼を見つめて「ひとつ、聞きたいことがあって」と切り出す。


「私が作ったポートフォリオは、どんな色に見えていたんですか?」


慧さんが色弱者だと知ってから気になっていたのだ。緑系に加工した空は、何色に見えていたのか。

彼は昔を懐かしむような目をして、ためらいなく答える。


「夕焼けに見えた。綺麗なグラデーションの」


それを聞いた途端、私は感動して目を輝かせた。


「すごい……神秘的!」


率直な感想を口にすると、慧さんは驚いたように目を丸くする。


「同じ絵でも見る人によって色が違うって、やっぱりすごいですよね!? ……あ、そんなふうに言ったら失礼なのかな? でも、純粋に感動して──」


いつの間にか元気が戻っていてぺらぺらと話している最中、慧さんがこちらに身を屈めてきた。

仰向けになったままの私を優しく抱きしめ、感極まったような、しっとりした声を紡ぐ。


「ありがとう。やっぱり君は、俺を幸せにする天才だ」


自分が感じた気持ちは彼にとっても嬉しかったようで、私は安堵の笑みをこぼして抱きしめ返した。「今の言葉、そっくりそのままお返ししますよ」と囁いて。

あなたのおかげで、私の世界も幸福な色で埋め尽くされているから。


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