最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

水族館をじっくり堪能したあとは、レストランで海を見ながら遅めの昼食を食べ、また別のスポットでイルカやペンギンと触れ合ったり、ショップでお土産を買ったりした。

ひと通り楽しんで外へ出ると、すでに夕陽は沈んでいて、辺りがライトアップされ始めている。遊園地も船も美しい七色の光に照らされて、想像以上にロマンチックな雰囲気だ。

ウッドデッキの手すりに肘をかけて島内の夜景を眺め、私は感嘆の声を漏らす。


「夜の八景島ってこんなに綺麗だったんですね」
「ああ。クリスマスはもっとすごそうだ」


ふたり並んでしばし景色を眺めていたとき、鼻がムズムズしてきて「くしゅっ」とくしゃみが出た。昼間は暑いくらいだったが、夕方から急に肌寒くなってきた。

直後、慧さんが私に密着したかと思うと、腕を回して抱き寄せられた。驚いて目を丸くするも、密着しているだけで全身がポカポカしてくる。

……暖かい。私が冷えないようにさりげなく気を使ってくれる彼に、愛しさがこみ上げる。

慧さんがこんなふうにするなんて、少し前までは考えられなかった。終わりに向けての日々で、夢みたいな幸せを感じられるとは。
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