最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
とにかく慧さんに言うべき、だよね。黙ったまま離婚しても、同じ職場なのだから隠し通せるわけがない。

彼はどんな反応をするだろう。離婚を決めているのだし、私への愛情がなければ子供ができても迷惑なだけかな……。

どちらにしろ、私はこれからひとりで育てていくことになるかもしれない。不安で不安で、胸がぎゅっと掴まれたみたいに苦しくて仕方なかった。


なにもする気が起きず、時間だけが過ぎていく。慧さんがいないので夕飯を作らなくていいのは助かるが、せめてシャワーは浴びようと重い腰を上げた。

ホテルライクの広々としたバスルーム、その白い木目柄の壁に備え付けられた鏡に、自分の裸を映す。

まだ特に変化のない、平らなお腹。でも胸は確実に張っていて、少し痛い気もする。この身体はこれからどんどん変わっていくのだろう。

考えるのは当然ながら妊娠についてばかりだ。シャワーを浴びたあと、少しだけお腹が空いたのでサラダを食べながら、今後つわりは酷くなるのかなと懸念する。

それでもまだ実感はあまり湧かず、どこか他人事のように感じるのは否めなかった。
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