最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
明後日は私の両親に挨拶をする日。妊娠に加えて離婚の問題もあるのだと改めて実感し、気分が沈み込む。とにかく、今日はもう話せそうにない。


「わかりました。気をつけて帰ってきてくださいね」
『ああ。おやすみ』
「おやすみなさい」


もどかしさを抱いて挨拶を告げ、スマホを耳から離そうとした、そのときだ。


『ほな畔上くん、今日こそええ女の子がそろった店行こかー!』


電話が切れる直前、威勢のいい関西弁が確かに聞こえ、私はぽかんと口を開いて固まった。


「……は?」


〝ええ女の子がそろった店〟? まさか今から行くの? ていうか、今の関西弁の男性は何者!?

慧さんが夜の街に繰り出す様を想像して、沸々と嫌な気持ちが湧いてくる。もし本当に行くのだとしたら、たとえ付き合いでもいい気分ではない。

こっちは深刻な問題で悩んでいるというのに……! もちろん、妊娠については彼は知らないから仕方ないんだけど!

腕を組んでしばし唸ったのち、私は決心した。


「……やっぱり正直に言おう」


よく考えれば、ひとりであれこれ悩んでいるのはおかしいだろう。これは私だけの問題じゃない。親になるのは慧さんだって同じなのだから。
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