最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「機械を入れますね。ちょっと冷たいですよ」


腰の辺りで区切られたカーテンの向こうから、先生らしき女性の穏やかな声が聞こえてくる。その言葉通り、ひやりとしたなんとも言えない感覚がして、ぎゅっと目をつむった。

ほどなくして、再び声がかけられる。


「モニター見えますか? チカチカ点滅しているのが赤ちゃんの心臓です」


ぱちっと目を開いてモニターに向けた。

黒い袋のような中に白い小さな影がある。さらにその中心で、確かにピコピコと動いているのが見える。

これが、心臓?


「すごい……」


思わずぽつりとつぶやいた。妊娠が確定しただけでなく、心臓が動いているところまで見られるなんて。

──私のお腹の中で、この子が生きている。もう生きているんだ。

その事実を目で見て初めてちゃんと自覚し、胸の奥から熱いものが込み上げるのを感じた。

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