最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
エコー検査を終えたあと、見た目も優しそうな女性院長の話を聞く。


「今は六週目ですね。心拍も確認できましたので、母子手帳をもらってきてください」


小さなエコー写真を見つめて頷いた私は、ひとつ大事なことを思い出してぱっと顔を上げる。


「あの、つい昨日も妊娠に気づかずにコーヒーを飲んでしまったんですけど、大丈夫なんでしょうか?」


昨日、高海からもらったカプチーノを飲んだし、朝はだいたいコーヒーを飲むのが日課になっている。カフェインはよくないということくらいは知っているので、心配になって質問してみた。

先生は穏やかな表情を崩さずに問いかける。


「一日にどのくらい飲まれます?」
「多くても一杯ですが、ほぼ毎日飲んでいました」
「それくらいでしたら問題ありませんよ。まあでも、気をつけるに越したことはないわね」


ほんわかとした笑顔を返され、私はホッと胸を撫で下ろした。表情を緩め、「わかりました。ありがとうございます」と軽く頭を下げたあと、ふと実感する。
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