最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~

四時頃に帰宅した私は、緊張から解放されたせいか疲れがどっと押し寄せて、夕飯を準備する前に一旦ソファに横になった。

途端に睡魔に襲われ、あっという間に意識が引きずり込まれていく。

そうしてどのくらい経ったか、気がついたときには心地いい声が耳に響いていた。


「……一絵」


呼ばれていることがわかり、うっすらと瞼を持ち上げる。次第にクリアになっていく視界には、私の顔を覗き込んで落ち着いた笑みを浮かべる旦那様が映った。


「ただいま」
「あ、おかえりなさ……あれ!? 私、寝ちゃって──」


ぼうっとしたまま挨拶を返そうとしたとき、うっかり寝過ごしてしまったのだと気づいて、勢いよく上体を起こした。

直後、急激に吐き気を催して「うっ」と口元を手で覆う。

き、気持ち悪い……もしや、これがつわり? さっきまで平気だったのに、こんなに急になるものなの?


「どうした? 具合悪いのか」


慧さんの表情も一気に心配そうに変わり、すぐさま私の背中に手をあてて支えてくれる。起きているのがつらいので、とりあえずもう一度ゆっくり横になった。
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