最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「ごめん、なさい……ちょっと、気持ち悪くて……」
「休んでろ。夕飯は気にしなくていいから。ベッドのほうがいいか?」


あまり動きたくないのと、ひとりになるのはなんとなく心細いのとで首を横に振った。

了承した慧さんは、ブランケットを持ってきてかけてくれる。彼の気遣いがありがたくて、胸の奥がじんとした。

しばらく横になっていると、いくらか吐き気は和らいできて、代わりに彼への恋しさが湧いてくる。

だって、「吐き気があるなら食べられないよな……」とぶつぶつ言いながら、キッチンでなにかを用意してくれているんだもの。

慧さんが料理する姿とか、ほとんど見たことがないな。きっと看病も慣れていないだろう。出張の疲れもあるだろうに、自分よりも私のことを気にかけてくれている彼が、とても愛しい。

そんなあなたとの子供を授かったんだよって、今すぐ伝えたい。

ワイシャツを腕まくりした彼がこちらにやって来て、「とりあえず、温かいお茶」と言ってマグカップをテーブルに置いた。そのタイミングで、私は横になったまま口を開く。


「慧さん……」
「ん?」


心配そうにこちらを見る彼と視線を合わせ、意を決して告げる。


「赤ちゃんが、できたんです」

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