最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
軽く眉根を寄せて不思議そうにしたあと、電話したときのことを思い出したらしく「ああ」と声を漏らした。


「聞こえていたのか。あの関西弁の人は一応ネット事業の社長で、会うたびああやって誘ってくるんだ」
「会うたび!?」
「一度も誘いに乗ったことがないからだよ。行くわけないだろう、一絵がいるのに」


ふっと浮かべる余裕の笑みにドキリとさせられたのもつかの間、私の頬に手を添え、まっすぐな眼差しを向けられて、さらに胸が高鳴る。


「もう君を不安にはさせない。俺を信じてくれ」


凛としたその声は、疑う余地もないほど頼もしく感じ、私は口角を上げて「信じます」と頷いた。

そのまま唇が寄せられ、優しく重ねられる。

まるで、新しい夫婦関係を始めるために、改めて交わす誓いのキスのようだった。


まもなくやってくる妊娠三カ月目は、つわりも今以上に大変になるかもしれない。しかしそれよりも、心を満たされることのほうがきっと多いはず。

さらなる幸福が待っている予感を抱いて、私たちはやっと本物の夫婦として歩み始めた。


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