最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
「赤ちゃんが、できたんです」


──赤ちゃん?

まさか……信じられない。奇跡が本当に起きたっていうのか?

あまりの驚きで 「……え?」と間抜けな声がこぼれた。

いてもたってもいられなくなり、不安げに眉を下げる一絵のそばに近寄って経緯を聞く。産婦人科にも行き、新しい命が確実に宿っていると判明したらしい。


「私、この子を──」


一絵は泣きそうな顔でなにかを言おうとしたが、構わず彼女の身体を抱きしめた。

……俺の手、震えてる。これほど感動したことがあっただろうか。

今まで夫らしいことをなにひとつしてこなかった俺に、こんな幸せが訪れていいのかと恐れ多くなる。でも、最高に喜ばしい事実がわかって、想いを留めておけるはずがない。


「一絵、悪いが離婚の話は白紙にさせてもらう」
「え……」


目を見張る彼女をまっすぐ見つめ、切実な気持ちを声にする。
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