独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
玄関に立つ小田切先生と、正面から目が合う。今日の彼は、ジャケットにカットソー、ジーンズという、小綺麗だがカジュアルな服装だ。
彼は私を視界に映すなり驚いたように目を見開き、言葉を失っていた。
「びっくりしました? 俺の自信作です」
颯がしたり顔で説明しても、小田切先生は表情を変えないままジッと私を見つめている。
うう、居たたまれない……。
「へ……変、でしょうか?」
沈黙に耐えきれず、自分からおそるおそる尋ねた。小田切先生はすぐに「ううん」と首を横に振る。
「すごく似合ってる」
やわらかく微笑んだ彼を見て、こわばっていた頬がふっと緩む。
よかった……。
お洒落を頑張って、それを誰かに認めてもらう。ずっと忘れていたその喜びが、じんわり胸をあたためてくれる気がした。
散々冷やかされながら家族に別れを告げ、家の前に停まっていた小田切先生の車に乗せてもらった。
普段はあまり車に乗らないので実家に置きっぱなしにしているらしいが、今日は私の荷物を運ぶため、わざわざ一度実家に寄ってから来てくれたそうだ。