独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
四階の自宅に着き、廊下を歩きながら彼が話す。
「ひとつ使ってない部屋があって、そこを愛花先生に使ってもらおうかと思ってたんだけど」
「はい」
頷きながらその後を追うと、ひとつの部屋の前で立ち止まった彼が、ドアを開ける直前で苦笑する。
「……ちょっと、片づけが間に合わなくて」
そう前置きした彼がガチャっとドアを開けると、そこは空き部屋というより物置だった。
引っ越し業者の段ボールに入ったままの荷物や、大量の本、積み上げられた衣装ケース。整理はされているが空いたスペースはほとんどなく、たしかに人が住める感じではない。
「と、いうわけで」
小田切先生は早々と物置部屋のドアを閉めてしまい、私を見下ろしてにっこり笑った。
「夫婦なんだし、寝室は一緒でいいよね?」
「えっ」
そ、それは予想外の展開なんですが……!
「クローゼットも広いし、不便はないと思うよ。こっち」
彼は私の返事を待たず、ギュッと私の手を握って隣のドアに導いた。