独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
ちょっと、なんで手を……! 私は軽いパニックに陥りながらも、寝室に引き込まれてしまう。途端に、そこで寝起きしている彼の香りにふわっと包まれて、心拍数が跳ね上がった。
い、意識するな……! まだ昼間だし、いきなりベッドに押し倒されるなんてことはありえないって。
自分に言い聞かせているその途中で、いつの間にかその〝ベッド〟の目の前に連れてこられていることに気づく。
え?と思いながら隣に立つ彼を見上げようとした時には、身を屈めた彼の顔がすでに間近にあって。
「愛花先生って、ホント隙だらけ」
片側の口角を上げ、小悪魔的な笑みを浮かべた彼は、私の背中に手を添えながら、ゆっくりベッドに押し倒す。スプリングがギシッと軋む音とともに、私の胸もドキンと跳ねた。
そのまま覆いかぶさりキスの体勢に入ろうとする彼の体を、私は必死で押し返す。
「ま、待って、落ち着いてください……!」
「なに?」
すでに熱を帯び始めていた瞳が、若干の苛立ちを含ませながら私を見る。まるで、獲物を目の前にしておあずけをくらった、オオカミのよう。