独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 自信満々に宣言した彼は、私の頬にチュッと軽いキスをして、それから至近距離で甘くささやいた。

「また、しようね。……練習」

 耳から蕩けてしまいそうなその声に、全身がカッと熱くなった。

 やっぱり、こんなふうに体が過剰な反応を示すのも、彼の言うように私の気持ちが傾いてきた証拠……?なのかな。

 なんと答えたらいいのかわからずただ困った顔をする私に対し、小田切先生は余裕たっぷりに微笑んでいて、それがなんだか悔しかった。


 夕食を外で済ませ、交代でシャワー浴びた後、私たちは同じベッドに横になった。

 広々としたキングサイズとはいえ、小田切先生がずっと私の手を握っているので、今夜はしばらく寝付けそうにない。

「そういえば、ずっと聞きそびれてたんだけど」

 天井を見ていた彼が、不意にこちらに寝返りを打ち、思い出したように言った。

「愛花先生、脳ドッグはもう受けたの?」
「あ……実はまだなんです。受けなくてはと思うんですが、忙しくてそれどころじゃなくて」

 母と祖母のことがあるから、私や颯は若いうちに検査を受けておいた方がいい。昔、母の主治医に父がそう言われていたのを覚えている。

 そうでなくても、自分だって脳外科医を目指している身。脳ドッグの必要性は重々わかっているのだけれど……やっぱり、自覚症状が出ないと油断してしまう。

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