独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「ちゃんと休みを取って、早いうちに受けた方がいいよ。お母さんが発症したの、三十代だったよね。二十代のうちに一度、ちゃんと診た方がいい」
「……はい。そうします」
彼は、夫として心配してくれているのだろうか。それとも、脳外科医として当然の助言をしたまで……?
そんな二択を頭に思い浮かべて悶々としていると、小田切先生が「ふわぁ」と大きなあくびをした。子どもみたいに無防備なその姿に、思わずふふっと笑いがこぼれる。
「眠そうですね」
「うん。ホントは愛花先生より長く起きて、寝顔じっくり見ようと思ってたんだけど……俺の方が先に落ちちゃうかも」
とろんとした瞳に、甘えたような声。どきりと胸が跳ね、思わず目を逸らす。
「見なくていいですそんなの」
「やだ、絶対見る。……でも、また明日にしようかな。おやすみ、愛花先生」
「……はい。おやすみなさい」
挨拶をかわすと、すう、と一瞬のうちに眠りについた小田切先生。けれど、布団の中で繋がれた手はちょっとやそっと引っ張ったくらいじゃほどけなくて、ドキドキが収まらない。
「私……好き、なのかな……」
それでも自分の気持ちには相変わらず確信が持てなくて、私はまぶたが重くなるまで彼の寝顔を見つめ、ぼうっと熱に浮かされていた。