独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
天才外科医に救援要請です!
週が明けて忙しい日常が始まると、やはり彼のマンションで共に過ごす時間は極端に短くなった。主に小田切先生の方が帰りが遅くて、その時すでに疲れ果てた私は先に寝ている。
朝起きたらいつもウエストに彼の腕が絡まっていてドキッとするのだが、まったりしている暇はない。スキンシップは寝起きの彼に短いキスをされるくらいで、例の〝練習〟は、とりあえずまだ先へ進んでない状況だ。
なので、次にお互いの休みが重なる週末が、早く来てほしいような来てほしくないような……という、微妙な心境だった。
そんな週のちょうど半ば、水曜日。美波ちゃんが入院してから一週間になるその日の午前十時、予定通り彼女のオペが始まった。
オペ室の中央に横たわり、全身麻酔で意識のなくなった彼女を見つめると、どうしても胸が痛くなる。いつもなら冷静に見ていられる皮膚の切開や、頭蓋骨を削る作業。その一つひとつにも、動揺を覚えてしまう。
執刀医は腕のいい蓮見先生だし、麻酔医や機械出しの看護師もベテラン。だから、大丈夫。絶対に美波ちゃんはよくなる。
張りつめた緊張の中で何度も自分に言い聞かせ、私は蓮見先生の傍らで助手として動きながら、頭の奥深くに巣くう腫瘍が摘出されていくのを見守った。