独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
今の時間、彼はオペに入っていなかったはずだ。蓮見先生ができないなら、彼に頼むしかない。そばにいる私が、すぐに代われればいいのに……自分の能力のなさが、歯がゆくて、悔しい。
だけど、今はそんなことで落ち込んでいる場合じゃない。美波ちゃんを、助けなければ。
小田切先生にコールするナース、蓮見先生を運び出す医師や技師たちがバタバタと忙しなく動く中、私は美波ちゃんの脳を傷つけないようジッと動きを止めたまま、小田切先生が来るのを待った。
永遠にも感じられるその数分間。緊迫した空気の中で思い出すのは、先週美波ちゃんと交わした会話だった。
『私も颯も、母や祖母の死はとっくに乗り越えてる。だから、美波ちゃんには自分の体のこと、ちゃんと颯に話してほしいの。そして、ふたりで一緒に、病気に勝ってほしい。アイツ、なにも知らずにめっちゃ落ち込んでるの。美波ちゃんのこと、まだ吹っ切れてもない』
ふたりの仲を取り持とうと美波ちゃんの病室を訪れた私は、お節介だとわかっていたが、彼女にそう頼んでみた。しかし、そう簡単に彼女ののかたくなな態度は変わらなくて。