独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
『美波ちゃん……』
彼女は気丈に笑っていたけれど、泣きたいのを必死で堪えているのは、充血した赤い目を見れば、はっきりとわかった。
ほんっとうに、病気ってヤツは憎らしい。いつでも、誰かの大切な人の命を、幸せを、明るい未来を奪っていく。
もう、美波ちゃんからは、なにも奪わせたくない。絶対に、治したい。
直接彼女の腫瘍を取り除くことはできなくても、私は私のできることを、全力でやり抜く。
そう決意して臨んだオペで、まさかこんな事態になるなんて……。
「――お待たせ。代わるよ」
その時、オペ室に颯爽と入ってきた小田切先生の頼もしい声で、私は我に返った。
執刀医不在の数分間、気が遠くなるような緊張に身を置いていた私は、全身に汗をびっしりとかいていた。
安堵からついぼうっとしてしまった私に、小田切先生が淡々と告げる。
「気を抜いてる暇はないよ。オペに身が入らないんなら、出ていっても構わない。バイポーラ」
こちらを一度も見ることなく、顕微鏡を覗きながらナースに器具をを要求するその姿に、私もハッと目が覚める。
「すみません。やれます」
「よし。……急ぐよ。ついてきて」
「はいっ」