独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「よかったね。鴨川さんの腫瘍、全部取り切れて」
「はい。……でも、小田切先生がいなかったら、どうなっていたか」
「まさか蓮見先生が倒れるとはなぁ。さっきナースに聞いたけど、過労らしいよ」
「過労……?」
エネルギッシュな蓮見先生とは、あまり結びつかない言葉だ。いつも精力的に仕事をこなすだけでなく、女性関係も派手だし……。
「あとで、様子見に行ってみる? あんな人でも心配だし」
「はい。指導医ですし。あんな人でも」
ふたりして蓮見先生に毒を吐きつつ、手術着から白衣に着替え、彼のいる病室へ向かった。
「バカじゃないの!? さんざん『俺は不死身だ』とか言っておいて!」
個室の前まで来た時、ドアの外までそんな女性の大声が漏れていた。
この声……黒瀬さん? 私と小田切先生は顔を見合わせ、音をたてないように少しだけドアを開け、隙間から中を覗く。
「そんなに怒るなよ。ほら、病室でふたりきりなんて、滅多にないシチュエーションだ。もっと楽しんでもいいんじゃない?」
そこから見えた光景は、ベッドに横になる蓮見先生と、その体に馬乗りになる黒瀬さん。
またこのふたりは場所を選ばず乳繰り合っているのか……と一瞬げんなりしたが、話を聞いているとどうも今回は違うようだ。