独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「はぐらかさないで! だから言ってるじゃない、私と結婚して、少しはまともな生活を送った方がいいって」
「結婚ねえ……。どうしてそんなに俺と結婚したいの?」
黒瀬さんと蓮見先生が結婚……? あのふたり、『暇つぶし』の関係だったんじゃ?
「どうしてって……心配だからです! 自己管理ができないせいで、こんなふうに倒れたりするから!」
「やめてよ。俺たち、そうやって干渉し合う関係じゃないでしょ?」
蓮見先生が冷めた声でたしなめると、興奮状態だった黒瀬さんが口を噤み、ベッドから下りた。彼に背を向け、悔しげに唇を噛む表情が見える。
「……もういい。私、今度こそ本気で小田切先生に乗り換えるから」
「どうぞお好きに。アイツ、結婚したらしいけどね」
「結婚……? 誰と?」
「さぁ。なかなか教えてくれないんだ。秘密の関係みたいで」
蓮見先生が意味深に言うので、思わずどきりとした。
黒瀬さんには教えなくても、彼自身は、小田切先生の結婚相手に見当がついているかのように聞こえたのだ。