独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 それらを一つひとつ片付けているうちに医局からは人がいなくなり、やがてひとりきりになった室内で、私はずっとパソコンに向かっていた。

 そのうち時計の針が二十時を刺した頃、肩が少し凝ってきたので一旦画面から目を離し、座ったままでうーんと体を伸ばす。するとちょうどその時、医局のドアが開いた。

 私はてっきり小田切先生だと思い込み、「あの、ちょっとお聞きしたいことが――」と言いながら、くるりと椅子を回転させたのだけれど。

「お疲れさまです、愛花さん」

 医局に入ってきたのは、勤務を終えたらしい私服姿の旭だった。彼は室内を物珍しそうに観察しながら、私のもとに近づいてくる。

「旭……どうしたの? こんな時間に」
「実は今日、仕事でちょっとミスしちゃって……自分なりに反省点とか色々ノートに書き出してたら、いつの間にこんな時間で。運よく愛花さんも残ってたりしないかなぁ……なんて期待したら、本当にいてくれました」

 そう言って屈託なく笑う旭だけれど、なんで私が残ってることを期待していたのだろう。仕事で悩んでいるとか……?

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