独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「初めまして。早乙女颯です。姉がいつもお世話になっております」
「蓮見です。このたびは、きみの大切な恋人を危険に晒してしまったこと、申し訳ありませんでした」
「いえ、そんな……。手術を引き継いでくださった小田切先生から、それまでの蓮見先生の処置も完璧だったと聞いています。助けていただいて、本当にありがとうございました」
蓮見先生は「いえ」と恐縮しつつ、私にだけ聞こえる声でつぶやく。
「アイツ、カッコいいところ全部もっていきやがって……」
……大人げない。だから、指導医なのにイマイチ尊敬できないんですよ。
心の中で失礼なことを思っていると、蓮見先生がふと美波ちゃんの手元を見て言った。
「あれ? その指輪、もしかして」
「……はい。実は、ついさっき、彼がプレゼントしてくれて」
はにかむ彼女が見つめるのは、左手薬指に輝くダイヤの指輪。傍らでは、颯が妙に照れくさそうに頭を掻いている。
ま、まさか……!
「颯、あんたプロポーズしたの!?」
「姉ちゃん、声でかいよ。ここ、病院」
弟に指摘され、慌てて口もとを手で覆う。それでも追及するようにジッと颯を見つめると、颯は観念して認めた。