独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「……ま、そういうこと。実は、別れる前から指輪は用意してあって、でも捨てるに捨てられなくてさ。……ちゃんと渡せることになってよかった。これからはもっとそばにいて、美波を支えてやるつもり」
「颯。支えてもらうばかりじゃなくて、私も支えたい」
「……うん。わかってる。結局、美波がいなきゃだめだもん、俺」

 キラキラした目で見つめ合う颯と美波ちゃんは、すっかりふたりの世界に入ってしまった。

「いいねぇ、若いって」

 蓮見先生の年寄りくさいつぶやきに、私も同感。

「ホント、いいですねぇ」

 しばらくふたりに幸せオーラを分けてもらった後、私たちは気持ちを切り替え、美波ちゃんやその他の患者さんの診察に移るのだった。


 ひと通り夕方の回診が終わった後、一階の売店で夜食のカップラーメンを買った。

 今夜も小田切先生が帰らないつもりなら、私もひとりでマンションにいたくない。かといって医局では彼と顔を合わせてしまうので、空いているカンファ室で、試験勉強かオペの練習でもしよう。

 そんな予定を立てながら、一旦医局に戻るためエレベーターに乗る。

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