独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
いやに上機嫌な声だ。なんだか呂律も回っていないような気がする。まさか、具合でも悪いんじゃ……。
「どうしたのこんな朝早く」
『……実はですね。今日、愛花さんとデートできるんだって思ったら、緊張しちゃって、昨日の夜から朝方まで景気づけにずっと飲んでたんです。そしたら道端で動けなくなっちゃって……』
なんだ、ただの酔っ払いか。とりあえず安堵しつつも、大の男が道端で動けなくなっているというのは、さぞ周囲に迷惑だろう。
「馬鹿ね……。道端って、どこ? 警察に注意されないうちに迎えにいく」
『ホントですか? よかったぁ』
聞けば、旭のいる場所は病院から近いらしく、私は徒歩でその場所に急いだ。
周囲の店はほぼシャッターが下りている、静かな朝の繁華街。その一角の歩道の端に、体育座りでうつむく旭を見つけた。私はすぐさま近づいていき、しゃがみ込んで彼に声をかける。
「旭、迎えにきたよ。歩ける? それともタクシー呼ぶ?」
「愛花さん……。本当に、来てくれた」
顔を上げた旭は、なぜか切なげにつぶやく。そしておもむろにこちらに両手を伸ばし、私の体を引き寄せてギュッと抱きしめた。
彼の体からはきついアルコールの匂いが漂い、思わず顔をしかめる。