独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「……危機一髪」
「ごめんね。大丈夫?」

 思わず全体重を預けてしまったので、パッと体を離して尋ねる。

「平気だよ。愛花はどこも痛くなかった?」
「うん、純也のおかげで」

 そう答えると、純也は先に私を立たせて、ズボンについた砂を払いながら立ち上がった。私たちは手を繋ぎ、散歩を再開する。

「よかった、守ってあげられて」
「……そういえば、前にナースたちにいろいろ言われてた時も守ってくれたよね」
「ああ、さすがに聞き捨てならない暴言だったからね」
「あの時は言わなかったけど、純也だけはいつでも私の味方でいてくれるんだって思って、うれしかった。だから彼女たちの前でも強気でいられたの」

 自分を守ってくれるたったひとりのあなたの存在が、私にとってどれだけ大きなものか。

「ねえ」
「なに?」
「今、無性にキスしたいんだけど」

 そう言って急に接近してくる彼にドキッとしたが、その唇に人差し指を添え、そっと押し返す。

「……だめ。この辺、サーファーがたくさんいる」

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