独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「こちらがエグゼクティブスイートでございます」
ドアを開けてくれた女性に頭を下げつつ一歩足を踏み入れたところで、室内に甘い花の香りが漂っているのに気がついた。
「薔薇……?」
ぽつりと呟き足を進め、目の前にリビングルームが現れた瞬間、私は目を疑った。ピンクや白や赤、色とりどりの薔薇の花びらが、部屋中に散りばめられていたのだ。
これ、もしかして純也が……?
ゆっくり瞬きしながら、美しく香り高い花びらに彩られた部屋を見渡す。すると、花びらだけでなく、ソファに上に薔薇の花束を見つけた。数えなくても百本近くはありそうだとわかるボリュームの、巨大な花束だ。
絨毯の上に散らばる花びらを踏まないように注意しながらソファに近づき、花束を抱える。そして鼻を近づけ香りを嗅いだ瞬間、花束の中にメッセージカードが添えてあるのに気がついた。
そこには見慣れた純也の丸っこい文字で、英語のフレーズが。
【Together Forever】
英語ができなくたってわかる、シンプルな言葉。だからこそまっすぐ胸に入ってきて、思わず目頭が熱くなった。