独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
もともと観光で歩き疲れていたのに、バスルームでさらに体力を使い果たした私たちは、ホテルのふかふかしたバスローブに身を包み、そのまま部屋でルームサービスの食事を頼んだ。
夜の海が見える窓際のテーブルで、豪華なイタリアンを食べながら楽しくおしゃべりをする。
頭の片隅ではずっと今日が終わってほしくないと思っていたが、時間というのは残酷だ。
そのうちあっという間に日付が変わりそうな時間に近づいてきて、少しまぶたが重くなっていた私は、「そろそろ寝る?」と彼に聞いた。
純也はテーブルに置いたスマホで時間を確認し、「ちょっと待って」と言って立ち上がる。
待つってなにを……?
彼が向かった先は寝室で、頭に疑問符を浮かべながらも窓の外をぼうっと眺めて彼が戻るのを待った。
一分ほどで彼が戻ってきた気配を感じたので振り向くと、彼はその手に薄いリボンのかかったネイビーの細長い箱を持っていた。
「二十九歳おめでとう、愛花」
「あ……もしかして、十二時まで待っててくれたの?」
純也は返事をせずに微笑むだけだが、おそらくそうなのだろう。彼の心遣いに感激しながら、箱を受け取る。
「ありがとう。っていうか、プレゼント、いくつ用意したのよ……?」
「心配しなくてもこれで最後だよ。開けてみて」