独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 彼に促され、リボンを解いて箱のふたを開ける。そこから覗いたのは、とても上品で高級感のある、白地にピンクゴールドのラインが入った万年筆。持ち手には、アルファベットで名前まで入っていた。

「きれい……」
「俺たち、職業柄アクセサリーの類はご法度だからさ。毎日仕事で使ってもらえるものがいいと思って」
「ありがとう、すごくうれしい」

 文房具に特にこだわりのない私が病院で使うのは、製薬会社の名が入った三色ボールペンばかり。それでも不便はないのだが、こうして上質な万年筆を贈られると、やっぱり全然違うなと思う。それに……。

「職場では早乙女のままで通してるけど、このイニシャル、小田切のОだよね。くすぐったいけどうれしいな」

 そっと指で撫でた万年筆の側面には、【Aika.O】の文字。ハッキリ苗字が書いてあるわけではないが、私は小田切愛花になったんだって、改めて実感させられる。

「休暇が明けたら早速使わせてもらうね」
「よかった、気に入ってもらえて。じゃ、いい加減疲れてるだろうし寝ようか」
「うん。……本当にありがとう、純也」

 
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