独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
椅子から立ち上がり、彼の手に自分からぎゅっと手を重ねてお礼を言う。純也は照れくさそうに「どういたしまして」と笑って、私に軽くキスをした。
ベッドに入った後、純也と手を繋いだまま目を閉じ、幸福な誕生日の余韻に浸った。
私、今回の旅行でいくつプレゼントをもらったんだろう。
素敵な旅館やホテルでくつろぐ時間、美味しい食事、綺麗な景色、バラの花束、万年筆、たくさんのキス、愛の言葉……それから、体に残る甘い熱。
幸せすぎて、一生分の運を使い果たしちゃった感じ……。
ぼんやりそんなことを考えているうちに、いつの間にか眠りに落ちていた。
『愛花』
誰かがまた私を呼んでいる。……誰? どこにいるの?
手を伸ばしても辺りは暗く、相手の姿が見えない。心細くなった私は、思わず『純也!』と呼びかけた。
『純也、純也』
早くここへ来て、私を抱きしめて――。
「愛花?」
ハッと目を覚ますと、私は純也の車の助手席にいた。そうだ、私たち熱海を出て……東京に向かっている途中だったんだっけ。