独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
いつのまにか寝てしまったけれど、今どの辺を走っているんだろう。長い間熟睡していたのか、頭がぼうっとして、視界もハッキリしない。
「……ここ、どこ?」
「もうすぐ家だよ。だいぶ疲れてるみたいだな。帰ったらすぐ休もう」
私、そんなに寝ていたのか……。旅行ではしゃぎすぎたのかな?
「うん。遊び慣れてないから疲れたみたい。眠気が取れなくて」
ふにゃっと力ない笑みを浮かべつつ、これはただの眠気なんだろうかと疑問に思う自分もいた。
純也が運転する横顔がぼんやり二重に見えて、うまく焦点が合わない。
ふと、心がざわめく。
これらの症状は全部……私が長年怖れていたものではなかっただろうか。
「ねえ、純也……私、もしかしたら……」
ある予感を口にしようとしたその瞬間、固い鈍器で殴られたような痛みと衝撃が後頭部を襲い、私はうずくまった。
「愛花……!?」
耳もとで純也の焦った大声が聞こえたけれど、なにか応える余裕はなかった。
痛い、痛い、痛い。気持ち悪い。吐きそう。
私、死んじゃう……?
漠然と弱気な心が芽生えるのと同時に、頭の中は真っ黒な霧で覆いつくされ、ふっと意識が途切れた。