独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「小田切……本当に、お前がやるんだな」
愛花を救うためのオペに入る前、助手に入ると申し出た蓮見先生が俺に確認する。
愛する女性の皮膚にメスを入れ、骨を削って頭を開き、寸分の狂いも許されないデリケートな脳の内部に触れる。蓮見先生はそのことに俺が耐えられないと予想し、最初は自ら愛花のオペを執刀するつもりだった。
……しかし、俺はその申し出を断った。
「ええ。蓮見先生を信頼していないわけじゃないですが、もしものことがあった時、自分が執刀していればよかったと後悔したくありません」
「……わかった。覚悟ができているなら、助手として最善を尽くす」
「よろしくお願いします」
フットペダルを踏み、オペ室のドアを開ける。中央に横たわるのは、生死の境をさまよいながらも頑張っている愛花だ。
俺は機械出しの看護師や麻酔医に淡々と指示を出しつつ、頭の片隅では、少し前に愛花と交わした会話を思い返していた。